ポピュリズムの嵐吹き荒れる今こそ知りたい「動乱のロシア史」
「ソ連という実験」松戸清裕著
ポピュリズムの嵐吹き荒れる中で、再びロシア革命とその所産に注目が集まっている――。
世界史上初めての共産主義国家だったソビエト連邦。しかしいまやソ連崩壊後に生まれた世代が若手社員として続々増えつつある。他方、冷戦崩壊後に一気に進んだグローバル化に対して、このところ急増しているのが、グローバル化に取り残された階級によるポピュリズムの嵐だ。
本書の著者はソ連史を専門とする中堅政治学者。副題が「国家が管理する民主主義は可能か」。つまり、共産主義を全体主義と同一視するのは歴史的には正しくない。共産主義は本来、究極の民主主義だという。
本書はスターリン批判の後、フルシチョフとブレジネフの時代までを対象とするソ連政治の専門的分析を試みる。「雪解け」が叫ばれ、西側との「平和競争」を標榜したフルシチョフ期。その行き過ぎを恐れ、社会の活性化を抑えきれなくなるという不安から引き締めにかかったブレジネフ期。折々に日本への言及も多く、著者の関心が単なる外国研究ではなく「民主主義」の普遍的な可能性の是非であることがよくわかる。
いまも社会主義を標榜する国家はあるものの、冷戦崩壊をもって共産主義の「実験」は明らかに失敗した、と著者。そこから何を学ぶかは、集産主義(コレクティビズム)を指摘される日本人にも大いに関係があるだろう。(筑摩書房 1800円+税)