「魂でもいいから、そばにいて」奥野修司氏

公開日: 更新日:

 死者、行方不明者1万8000人余りを出した東日本大震災から6年。その被災地で、死者を身近に感じる体験をした人たちがいる――。

 本書は3年半以上、被災地に通い続けた著者に、遺族がぽつりぽつりと語った、不思議としか言いようのない16人の物語の記録である。

「震災の後、被災地ではドアを開けると大勢のズブ濡れの人が立っていたなんて類いの幽霊譚がいっぱいあったんですよ。あるとき、そんな話を宮城県在住の在宅緩和医療の岡部医師としていたら、『幽霊譚はお迎え現象と同じだ。きちんと聞き取りをしたほうがいいんだがなぁ』と言われまして。でも、僕は幽霊なんて信じないタチ。ずっと気が乗らなかったんですが、ある話を聞いて取材をしようと決心したんです」

 それは石巻のあるおばあさんの話だった。近所の人から「あんたのおじいさんの霊が大街道の十字路で出たよ」と聞き、会いたさに毎晩、その十字路に立っていた。

 切ない話だが聞いてホッとしたという著者は、震災2年後から、本格的に聞き取りに乗り出した。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出