「中国はなぜ軍拡を続けるのか」阿南友亮著

公開日: 更新日:

 現在、中国の国防費の総額は米国に次いで世界第2位の規模にある。その軍事力を背景にした東シナ海や南シナ海での海洋権益の拡大は日本などの近隣諸国や米欧諸国に脅威を与えている。本書は中国が軍拡を推進するに至った政治的背景と経緯、軍拡の諸問題、そして軍拡の日中関係への影響について論じたもの。

 重要なのは、中国の軍隊=人民解放軍は実質的にも制度的にも共産党直属の軍隊で、国家に属するものではないということで、これが問題を解く鍵ともなる。

 端的に言えば、軍拡の要因は共産党をめぐる内憂外患にある。「内憂」は圧倒的な貧富の拡大により生じる党中央への不満で、それを軍事力で抑え付け、不満の矛先を排外的なナショナリズムの発揚で外に向けさせる。排外的プロパガンダがアジア・太平洋地域の緊張を高め、結果的に「外患」を招く――というジレンマに陥っているのが中国の現状だ。

 この軍拡路線を継続する方向の習近平の権力強化が明確になった今、必読の書。

(新潮社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ30代アナ永島優美、椿原慶子が辞めて佐々木恭子、西山喜久恵50代アナが居座る深刻

  2. 2

    志村けんさん急逝から4年で死後トラブルなし…松本人志と比較される女性関係とカネ払い

  3. 3

    ダウンタウン浜田雅功の休養でよぎる2023年の「意識障害」報道…「前日のことを全く記憶していない」

  4. 4

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  5. 5

    悠仁さんの成人会見は秋篠宮家の数々の危機をいっぺんに救った

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  2. 7

    志村けんさん急死から4年で関係者が激白…結婚を考えた40歳以上年下“最後の女性”の存在

  3. 8

    備蓄米放出でもコメ価格は高止まり…怪しくなってきた農水省の「実態把握」

  4. 9

    日テレ「さよなら帝国劇場」でわかったテレビ軽視…劇場の階段から放送、伴奏は電子ピアノのみ

  5. 10

    フジテレビ「Live News イット!」が大苦戦中…上垣皓太朗アナが切り札となるか