「清張鉄道1万3500キロ」赤塚隆二著
JR全線1万9981.8キロ(2013年)に乗った“乗り鉄者”を自称する元朝日新聞記者が、「西郷札」「青春の彷徨」から「砂の器」「犯罪の回送」まで、松本清張の延べ134作品を取り上げ、作中の誰が最初にどの路線に乗ったのかを徹底研究。
「西郷札」が雑誌に掲載されたのは1951年。舞台は新橋―横浜間で鉄道が開業した年の7年後の1879年で、主人公の雄吾は、紙問屋の粂太郎と東京から宮崎に向かう際に、横浜の郵便汽船に乗るために今の時刻表で言えば、東海道線新橋―横浜26.9キロと根岸線横浜―桜木町2キロの計28・9キロを乗った。これが清張世界の鉄道の第一歩。著者は、その時の車窓に広がった風景と、乗り合わせた乗客がどんな人たちだったかに想像を膨らます。
松本清張作品に登場する初乗り路線図など、詳細な資料編付き。
(文藝春秋 1500円+税)