江戸時代は貧乳がほとんどでエロの対象にならず
日本の男は巨乳が大好きだ。「いや、俺は小ぶりのおっぱいが好きだ」という人もいるだろうが、あくまでも少数派に過ぎないだろう。しかし、いつの時代でも大きなおっぱいが好まれていたわけではない。
安田理央著「巨乳の誕生」(太田出版 1600円+税)では、おっぱいに対する社会の受け止め方の変容について大真面目に考察。綿密な調査と資料によっておっぱいの歴史の全貌を明らかにしている。
日本の歴史の前に、海外の場合を見てみよう。中世ヨーロッパではキリスト教の影響が強く、性は淫らなもの=悪という発想から、女性は貧弱な肉体の方が尊ばれていた。胸の谷間などは「悪魔の隠れ家」とも呼ばれていたほどだ。中世ヨーロッパを暗黒時代と呼ぶことがあるが、巨乳好きにとってもまさに暗黒時代だったと言えそうだ。
20世紀に入っても、西洋ではおっぱいが揺れたりするのは野蛮だと嫌われていた。そのため、コルセットで支えたり、肩から紐でつり下げて固定するブラジャーというアイデアが生まれた。胸の谷間がエロチックゾーンとして着目されるのは、アメリカでマリリン・モンローが登場する第2次世界大戦まで待つことになるのだから遅咲きである。
日本の場合はどうか。実は、世界に誇るポルノグラフィーである春画にも、おっぱいはほとんど描かれていない。女性器は呆れるほど精密に描かれており、大半が着衣のままで下半身だけをめくりコトに及んでいるか、全裸であってもおっぱいは極めてあっさりとしか描かれていない。おっぱいを愛撫している様子を描いた春画も極めて少ないのだ。
当時の日本の女性は、その骨格や栄養状態などと関連して貧乳が多く、生殖器以外は男女の差としてさほど重要に捉えられなかった。したがって、日本ではおっぱいには男の性的興奮を発生させるという役割がなく、顔の延長のようなものであり、だからこそ混浴も日常だったと考えることができるという。日本人が巨乳の魅力にようやく気づくのは、西洋と同じく戦後であるという。
元祖肉体派女優の京マチ子、元祖ボインの朝丘雪路ら、日本人男性を巨乳好きに変えた女神たちも紹介。大小にかかわらず、おっぱい好きなら必読の書と言えよう。