「異形のものたち」小池真理子著
神田にある小さな広告代理店に勤める私は久しぶりに、親友だった美咲と彼女のお父さんと3人でよく訪れた森の奥にある山荘に出かけた。
2人が死んでもう15年になる。花見に行く途中、トラックと正面衝突し、炎上。突然の別れだった。
私は室内に入ると、3人で過ごした楽しかったひと時に思いを馳せた。と、キッチンのあたりに何かぼんやりとした影が感じられた。気が付くと私は車を走らせ、喫茶店へ飛び込んだ。食事を済ませ帰ろうとすると、店主が恐怖に顔を歪め、「あんたのそばに2人いるよ。1人は女の人……」。
山荘に戻った私は、ふと古い週刊誌に目を留めた。あの事故の死亡者リストの中になぜか私が……。(「森の奥の家」)
甘美な恐怖が心奥をくすぐる6つの幻想怪奇譚を収めた小説集。
(KADOKAWA 1400円+税)