「やっぱり友だちはいらない。」押井守著
いまの世の中、「友だちがいない」などと言ったりすると、人間性に重大な欠陥があるかのように見なされてしまう。しかしそんな風潮に対して、「いない」のではなく「いらない」と言ってのけるのが、「機動警察パトレイバー」シリーズなどでお馴染みの映画監督・押井守である。
押井の考える友だちは、「イラクで失踪したときに、後先考えずに、すぐに飛行機に飛び乗って現地に来てくれる人」。とはいえ、そんな存在に出会えるのは奇跡以外の何物でもない。そんな幻想にすがるよりも、自分を導いてくれるマスター、一緒に何か作れる仕事仲間、自分の本質を見抜いてくれる家族、この3種類の人間に、自分を必要とする小さきもの(イヌやネコ)がいればいい、と。
目からウロコの友だち論で、友だち関係で悩んでいる人は新しい視野が開けるに違いない。本書は「友だちはいらない。」の増補版。「やっぱり」とダメ押ししなければならないほど「友だち幻想」は根強く、本書もまだまだ必要とされそうだ。(東京ニュース通信社 1300円+税)