「明智小五郎回顧談」平山雄一著
著者は現役の歯科医師にして、江戸川乱歩研究の第一人者という肩書を持つ。そもそも明智小五郎の年代学に興味を持ち、私家版を発表したのが1989年のこと。それから、「明智小五郎読本」「明智小五郎事件簿」の企画に参加、それが縁で10年以上書きためていた本書が日の目を見ることになる。
この小説の特徴はたくさんの実在の人物、小説の人物が登場することにある。著者いわく、「時代背景を示唆する」ためだそうだが、フルネームは提示しない。読者に謎かけをしているのだ。
物語は明智の父親が誰か、一高・帝大時代の暮らしぶり、乱歩との邂逅、二十面相との秘められた関係など明智小五郎の謎めいた生涯を名探偵自身が独白していく。(集英社 2200円+税)