「いろいろあった人へ」伊集院静著
ベストセラー「大人の流儀」シリーズからえりすぐりを集めた傑作選。
3年前に前妻と同じ病気で亡くなった書店員のA子さんとの思い出を振り返りながら、彼女の情熱をずっと覚えていたいから彼女が働いていた書店でサイン会を続けているという著者。
これまでの半生で多くの別離を経験してきたが、彼ら彼女たちは「さよなら」とは一言も言わなかったが、時折、彼らの元気な姿が見える時がある。そうした時に「さよならも力を与えてくれるものだ」と思うとつづる。
他にも、若き日に世話になったホテルの支配人との思い出や、前妻の通夜の席で彼女の祖父が自分に語った言葉など。人生で出会いと別離を繰り返してきた氏の言葉が読者の背中をそっと支え、前に向かわせる。
(講談社 926円+税)