「彼女がエスパーだったころ」宮内悠介著
千晴は、取材で訪ねた「わたし」が持参したスプーンをたちまち小さな龍のオブジェに変形させてみせた。彼女がスプーンが曲がることに気づいたのは5歳のときだったという。彼女が注目を集めたのは、就職後にストレスからうつ病になり、大量のスプーンを曲げては放る動画をウェブに公開したことがきっかけだった。
エスパー界のゆるキャラとなった千晴自身は、超能力があるともないとも公言を避けていた。結婚相手の物理学者・秋槻が転落死した後、千晴は毀誉褒貶の日々を過ごしていた。わたしは彼女の上司や母親へも取材を続ける。(表題作)
火の扱いを覚えた猿による放火事件をテーマにした「百匹目の猿」など、SFとミステリーが融合した短編作品集。
(講談社 610円+税)