「平凡な革命家の食卓」樋口有介著
東京・国分寺の市会議員・増岡誠人が自宅で死亡しているのが発見されたところから物語は始まる。増岡の遺体は帰宅した家族によって発見され、医師と警察が立ち会うことになったが、特に不審な点もなく医師の見立ても急性の心不全だった。
ところが、所轄での、ぱっとしない毎日を送っていた卯月枝衣子警部補は、このなんでもない病死をどうにか殺人に格上げして本庁栄転の足掛かりにできないかと思いつく。
亡くなったのは、前職は中学教師で担がれただけの市会議員だが、まがりなりにも政治家だと主張して、念のため血液検査をしておくことを提案。刑事部長を言いくるめて、強引に単独捜査に乗り出すのだが……。
「ぼくと、ぼくらの夏」で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞でデビューして以来、ユーモアあふれる青春ミステリーなどの分野で活躍している著者による最新作。なんとか事件に仕立てようともくろむ主人公が掘り返した真実に驚かされる。
(祥伝社 1600円+税)