「翼竜館の宝石商人」高野史緒著
1662年の晩夏、アムステルダムに奇妙な噂が流れた。市庁舎に飾られているレンブラントが描いた歴史画の中から、古代ローマの英雄、キウィリウスが飛び出して、夜な夜な回廊をさまよい歩くのだという。そんな折、宝石商人ホーヘフェーンがペストで死に、郊外に埋葬された。だが、その翌日、彼とうり二つの男が館の密室で発見された。
偶然、死の前の晩にホーヘフェーンと会っていたレンブラントの息子ティトゥスと記憶を失った謎の男ナンドは、入れ違いに館に入っていった外科医のカルコーエンとペスト専門医がなんらかの関わりがあるはずだと、周辺の事情を探り始める。すると、ホーヘフェーンには幼い頃に生き別れとなっていた双子の弟がいたことが判明。これで解決と思いきや、この事件にはさらなる深い闇がはらまれていたのである――。
新興著しい国際都市アムステルダムを舞台にレンブラント、ペスト、密輸といった道具立てを組み入れて壮麗な歴史絵巻に仕立てた、傑作ミステリー。
(講談社 1550円+税)