「骨を弔う」宇佐美まこと著

公開日: 更新日:

 川の増水で崩れた堤防の土中から、人骨のようなものが露出して大騒ぎになったが、よく調べたら理科の教材として使われている骨格標本だった……。そんな地方紙の小さな記事を見た家具職人の本多豊は、数十年も昔の小学生時代に仲間と一緒にいたずらで山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。

 当時のリーダー的存在だった佐藤真実子の発案で、いけ好かない担任の教師を困らせてやろうと学校の骨格標本を盗み出し、結局その標本は森の中に深い穴を掘って埋めたのだ。記事にあった発掘場所と、骨のあった場所とは異なっていたが、豊はふと「あのとき埋めたのは本当に標本だったのか」との疑念を抱く。当時一緒にいたずらに参加した友人と共に記憶をたどっていくのだが……。

 昨年「愚者の毒」で第70回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞した作家による最新作。幼い頃の思い出から推理を重ねて思わぬ事実に行きあたる。話の中に著者が出現する趣向も面白い。

(小学館 1600円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」