「日傘を差す女」伊集院静著
永田町のビルの屋上で老人の死体が発見された。胸に深く刺さっていたのは捕鯨用の銛で、老人は和歌山の捕鯨船の砲手、稲本和夫と判明した。
死体のそばに遺書はあったが、警視庁捜査1課の立石刑事は自殺とみることに疑問を感じる。
ところがマスコミは、現内閣に対する抗議の自殺だと騒ぎ出した。稲本は農水大臣に調査捕鯨の割り当ての捕獲頭数を拡大してほしいと陳情に来たが、秘書にけんもほろろに追い返されたという。
やがて赤坂不動尊の工事現場で男の死体が発見されたが、その凶器は稲本と同じ銛だった。稲本の同僚の話では、それは稲本の手製の銛で、3本あったという。
著者の6年ぶりの社会派ミステリー。
(文藝春秋 1700円+税)