「親子たい焼き 江戸菓子舗照月堂」篠綾子著
なつめは、駒込の菓子舗照月堂で職人として修業を始める。主人・久兵衛夫妻の2人の息子の子守として雇われ、下働きとして厨房にも出入りしていたなつめだが、その熱意を認められ、弟子入りを許されたのだ。
京で生まれたなつめは、8年前に火事で両親を失い、了然尼の江戸の庵に引き取られた。行方不明の兄の生死は今も分からない。修業初日、なつめは餡作りのための小豆を煮る作業から手ほどきを受ける。なつめが釜の番をしている間、久兵衛は数日後に売り出しが迫った「たい焼き」の試作に取り掛かる。同じころ、店に歌詠みとして名高い露寒軒が訪ねてくる。了然尼の友人である露寒軒はなつめの恩人でもあった。
小さな菓子舗を舞台に描く時代人情第3弾。
(角川春樹事務所 620円+税)