「明治銀座異変」滝沢志郎著
明治16年、銀座の煉瓦街を走っていた鉄道馬車の御者が、何者かに狙撃される事件が起こった。
事務所で銃声を聞いた開化日報社の記者・片桐栄一郎は、スクープ狙いで慌てて馬車を追いかけた。片桐の下で探訪員の見習いをしている加藤直が、暴走していた馬車のブレーキを引き、なんとか馬車を止めたが、御者は意識喪失。看護の心得のある英語を話す乗客の女が救急手当てを施して病院に搬送したものの、「青い目の子……」という謎の言葉を残して、結局御者は息を引き取った。片桐と直はその言葉の真相を調べるうち、外国人と攘夷派の武士との間のいざこざが多かった大政奉還の前年に、ある外国人が何者かに殺された事件に突き当たるのだが……。
去年「明治乙女物語」で第24回松本清張賞を受賞してデビューした注目の新人作家による、本格歴史ミステリー。幕末から明治にかけての世相を織り込みながら、思いもかけない過去の歴史が明らかになるストーリーに引き込まれる。
(文藝春秋 1700円+税)