「元年春之祭」陸秋槎著、稲村文吾訳
天漢元(紀元前100)年、豪族の娘・於陵葵は、楚国で祭礼をつかさどる名家・観家の客となる。観家の娘・露申は、男勝りに弓を操り、高い教養を備えた葵に目を見張る。観家の当主は、もともとは露申の父親ではなかった。4年前、伯父一家が謎の死を遂げたため、引き継いだのだ。
事件の夜、伯父の娘・若英が父親の暴力に耐えかねて露申の家に逃げ込んできた。伯父は、巫女となることを期待し、若英に厳しく術を教え込んでいたという。露申の姉が若英を預かることを伝えに伯父の家を訪ねると、一家は惨殺されていた。しかし、雪道には犯人の足跡は一つも残っていなかったという。葵が事件の謎を解き始めた直後、観家で新たな殺人事件が起きる。
気鋭の中国人作家による本格長編ミステリー。
(早川書房 1500円+税)