「GHQ ゴー・ホーム・クイックリー」中路啓太著
終戦直後の昭和21年2月、内閣法務局の官僚、佐藤達夫は国務大臣の松本烝治に呼び出された。手渡されたのはGHQがつくった憲法改正案で、これに基づき日本案を起草しろという。
実は数カ月前、国会内の委員会で政府試案をまとめたがGHQは拒否。そればかりか、<天皇はシンボル><戦争放棄>の条項を含む草案を押し付けてきたのだ。
わずか2週間の間に日本の法律らしく整えなければならない佐藤は、総理大臣官邸の放送室にこもって仕事をしていたところ、吉田茂外務大臣と出くわす。
GHQ草案の問題点をまくしたてる佐藤に吉田はつぶやいた。
「GHQとは何の略だか知っているかね? ゴー・ホーム・クイックリーだよ」
戦後の占領下で憲法制定に向き合った官僚たちの人間ドラマ。
(文藝春秋 1850円+税)