「ロンドン狂瀾」中路啓太著
1930年、ロンドン軍縮会議で日本の首席全権・若槻礼次郎は対米7割の大型巡洋艦の比率を認めさせようと必死に交渉を重ねていた。だが、イギリス側は強硬で、その上、外交交渉を知らない海軍の財部大将の失言も重なり、思い通りに進まない。
その夜、パブで独りグラスを傾けていた外務省情報部長の雑賀潤に、若い女が日本語で話しかけた。日本にいたとき、ある財閥の迎賓館で、誤って雑賀に酒をかけた瀬山春子だった。春子はアメリカの外交官スティムソンが若槻を高く買っているという。この女は何者だ……。
強硬な米英にひるまず戦った若き外交官を主人公にした歴史大作。(光文社 2100円+税)