「『もしもあの時』の社会学」赤上裕幸著
「たら、れば」なんてナンセンス、「歴史にifはない」といわれる。
だが、ifの思考はある時代を生きた人々の実現しなかった願望、失敗に終わった計画など、「ありえたかも知れない未来」を把握することを可能にし、歴史に埋もれた「敗者」を救いだし「未来」への視角を開いてくれるのだ。
1982年生まれの社会学者である著者が、フイリップ・K・ディックの歴史改変SF小説「高い城の男」や、小松左京や藤子・F・不二雄らの作品、さらには90年代に一大ブームとなった日本の架空戦記小説などを取り上げ、「歴史のif」の可能性を示した意欲的な論考である。
(筑摩書房 1600円+税)