「中野京子と読み解く 運命の絵」中野京子著

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 マネの「フォリー・ベルジェールのバー」は、パリのミュージックホールのスタンドバーのカウンターに立つ売り子嬢を描いた絵だ。その後ろは一面の鏡になっていて、酒瓶や客の姿が映っている。

 だが、マネは真後ろに来るはずのヒロインの後ろ姿を意図的にずらして、あり得ない場所に描いている。これはマネのつくりだしたイリュージョンなのだ。彼女の前にはひげを生やした紳士が立っている。好きなタイプではない。だが、早く良いパトロンを見つけなければ若い子に仕事を奪われる。運命の分岐点に立つ彼女の前を、孤独が木枯らしのようによぎった。

 他にワッツの「選択」など、人生の流転を描いた名画を、中野京子が該博な知識と鋭い視点で読み解く。

 (文藝春秋 1780円+税)

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