「東京パパ友 ラブストーリー」樋口毅宏著
有馬豪は30歳の若さでファンドマネジメント会社のCEO。スタイルが良く家事を完璧にこなす妻と可愛い娘に豪壮なマンション。絵に描いたようなエスタブリッシュメントだ。
一方の鐘山明人は52歳で、若いときはカリスマ建築家として名を馳せたが、やり手の都議会議員の妻と結婚し子供ができてからは、家事、育児すべてを担って妻をサポートする専業主夫となっている。およそ共通点がなさそうな2人だが、豪の娘と明人の息子は同じ保育園に通うパパ友だった。
明人に飲みに誘われ楽しく過ごした豪だが、別れ際に唇を奪われてしまう。最初は怒ったものの、なぜか明人に引かれている自分に気づく豪。再会してついに一線を越えた2人は背徳の愛に溺れていく。秘密裏に逢瀬を重ねる豪と明人だが、天網恢々疎にして漏らさず。ある日2人の関係が双方の妻子の前でバレてしまうことに……。
ボーイズラブの体裁を取りつつも、育児と仕事の葛藤、子供が生まれてからのセックスレス、夫婦間の階級格差、女性のDV、ミソジニーといった、現代家族のシビアな現実に鋭く切り込んだ問題作。
(講談社 1400円+税)