「中野のお父さんは謎を解くか」北村薫著

公開日: 更新日:

 主人公は、小説文宝の編集者・田川美希。ある日、作家と挿絵画家の関係を調べていて、グレゴリ青山の「マダムGの館 月光浴篇」というコミックエッセーの中で「やって来たのはガスコン兵」という謎の一節に出合う。どうやら太宰治の短編「春の盗賊」にある言葉なのだが、唐突に出てくるその言葉の意味がわからない。

 図書館で調べても何もわからなかった美希が最後に頼ったのは、定年間際の国語教師である父親。いったいガスコン兵とは何者なのか。疑問をぶつける美希に対して、父はその謎をするすると解いてみせるのだが……。(「ガスコン兵はどこから来たか」)

 本書は、出版部勤めの娘が持ち帰った文学に関する謎を、中野区在住の文学マニアの父が解き明かすほのぼの文学系のミステリー集。

 前作「中野のお父さん」の続編で、今回は松本清張を打ちのめした評論家の怒りの理由、泉鏡花が徳田秋声を殴った本当のわけ、ベストセラー「100万回生きたねこ」の別の顔など、文学ファンをうならせるネタ満載の8つの謎が提示される。

 出典元の本も読み返したくなってくる本好き必見の書。

(文藝春秋 1550円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭