サラリーマンが注目 アウトドア本特集
「椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門」スズキナオ、パリッコ著
「働き方改革」の余波で会社に長居できなくなった。急に自由な時間が増え、無趣味のサラリーマンが手持ち無沙汰だという。そんな人にすすめたいのがアウトドア。ひとりでも実践可能、自然と親しむ初心者向けのアウトドアハウツー本を紹介しよう。
フリーライターのふたりが始めて、何げなく命名したのが「チェアリング」。アウトドア用の椅子を持って集まり、屋外で飲む。ただそれだけだが、椅子に座った瞬間、景色の見え方が違ってきたという。そんなチェアリングの3カ条とは、「好きな場所に椅子を置いて好きなように過ごす」「装備はなるべく少なめ、酒やつまみも現地調達」「騒がない、汚さない、周囲の人々に威圧感を与えない場所を選ぶ」だ。
チェアリングするのにおすすめのスポットや、おすすめの椅子、チェアリング向けのおつまみ食べ比べ、便利グッズの紹介なども掲載。キャンプやバーベキューと違うのは準備や装備がいらない点。気負わず、今すぐ誰にでもできるアウトドアとして、ツイッターやインスタグラムでじわじわと広まっているようだ。
(Pヴァイン 1560円+税)
「ブッシュクラフト読本」長谷部雅一著
「ブッシュクラフトとはシンプルに自然と自分と対峙する遊びだ」と記す著者は、世界一周も経験し、秘境の旅も続けているアウトドアプロデューサー。本書では、何もない大自然の中で、野営を楽しむためのさまざまなスキルを紹介している。
事前準備から持ち物、テントやタープを設営するポイント、ロープの縛り方や結び方、たき火や石かまどのノウハウなどを伝授。また、ナタやナイフを使って、木の枝を箸や串、皿にしたり、簡易テーブルなどの作り方も解説。細かい手順を写真で説明しているので、初心者にもわかりやすい。肉メインのたき火料理も、見るからにおいしそうだ。
さらに、たき火や野営後の撤収方法など、環境への配慮も万全だ。使った後の刃物の研ぎ方なども抜かりなく教えてくれる。
(メイツ出版 1680円+税)
「絶対作ってみたくなるみんなのキャンプ飯」ライフスタイル編集部著
主にインスタグラムでキャンプの魅力を投稿するカリスマキャンパー18人が、おすすめのキャンプ飯を紹介。彩りが美しくオシャレな料理から、ド迫力の富士山鍋(野菜の山に豚バラを巻き付けて盛る)など、さすがインスタ映え上級者である。
しかし、よく見ると、案外手軽というか手抜き料理も。レトルト食品を出しただけ、買ってきた総菜を並べただけという写真もある。ペヤングソースやきそばにパクチーとクレソン、食べるラー油をかけただけなど拍子抜けする。洗うだけで食べられる流水麺も大活躍。料理というよりも手軽なアイデアが満載なのだ。
キャンプ飯の神髄、それは家族や友人と一緒に外で食べる「楽しさ」。景色と会話と料理をアウトドアで楽しむことが大事。そんなおおらかさも伝わってくる。
(オーバーラップ 1200円+税)
「森の生活図集」スズキサトル著
山形県出身の絵本作家である著者は、東京から長野県に拠点を移した。ブッシュクラフトワークの活動をするためだ。こうした野外技術は実践する人が絵も描くというのはまれだ。著者は実に丁寧なタッチのイラストで緻密に解説してくれる。
また、自然を愛する人ならではのこだわりや気配りも。環境に配慮した石のフライパンや、木を傷めない枝の切り方などに優しさがにじみ出ている。
日本古来のブッシュクラフトへの敬意も強い。交通事故で落命した野生動物の皮を利用した防寒具「狸の尻皮」も紹介。著者も愛用しているという。作り方も丁寧に解説。
野外技術の専門書だが「服装や装備に正解はない」と断言。
著者自身、活動時は宮笠をかぶり、手ぬぐいを首に巻き、リーフシューズという独自のスタイルだそう。
(笠倉出版社 1600円+税)
「アウトドアテクニック図鑑」寒川一著
キャンプ歴40年のアウトドアライフアドバイザーがつづる、ベーシックでプリミティブなキャンプのすすめ。自然はみんなのものという北欧の考え方「自然享受権」を手本にしたいが、実際の日本では禁止事項が並ぶことが多い。権利だけでなく、自然を守る責任や配慮という前提が崩れているからと著者は指摘する。
自然の中で生きる技術や知恵、力を身につけるキャンプも魅力的と説く。
また、子供に環境保全の神髄と自然を愉しむテクニックを教えたい人、子供にちょっと尊敬されたい人はぜひ熟読を。基礎知識はカラー写真で詳細を解説。ウッドクラフトやロープワークのハウツーはイラストで掲載。興味深いのは、コーヒー豆をヤカンで直接煮出すたき火コーヒー。入れる時間も娯楽だという。
(池田書店 1200円+税)