「食の実験場アメリカ」鈴木透著
食べ物は「その集団が過去をどう生き抜いてきたのかを伝える記憶媒体」だと著者はいう。
アメリカ社会の実権を握ってきたのは、イギリス系白人だが、アメリカ人が週3回以上は食べるハンバーガーをはじめ、アメリカを代表する食べ物は、彼らの食文化の遺産でもなければ、他国の食べ物のコピーという存在でもない。ポップコーンは先住インディアン由来の食べ物であり、バーベキューも先住民と黒人奴隷の存在なくしては存在しない料理だという。
本書は、そんなアメリカの食文化の歴史をたどりながら、豊かな食文化がなぜファストフードという画一化された食へと大きく塗り替えられたのか、そして現在、それに対する反動がどのようにアメリカ社会を変えつつあるのかを論じたアメリカ本。
(中央公論新社 880円+税)