「マネーの魔術史」野口悠紀雄著
18世紀の初め、財政危機にひんしていたフランスは「ローのシステム」を導入した。紙幣を発行する国営銀行と、フランス植民地との独占的な貿易権を持つ会社が結託し、返済義務のある「国債」を「株式」を経由して紙幣という債務に置き換えたもので、熱狂的な投機の後、財産危機は解決されずインフレだけが残った。
日本で7年目に入った異次元緩和は、このローのシステムと同じである。年金や高齢者医療費を中心として社会保障費は膨れ上がっているが、市中にあった国債を異次元緩和で日銀が買い上げて、財政負担を見えにくくしたのだ。
古代ギリシャから現在まで、形を変え現れ続ける「金融緩和」をひもときながら、その実像に迫る。
(新潮社 1500円+税)