「水が消えた大河で」三浦英之著
日本一の河川、信濃川・千曲川水系で起きたJR東日本の不正取水事件を追うルポルタージュ。
信濃川は、最大出力600万キロワットもの電気を起こす「電気の川」でもある。電気は、川から取った水を導水管によって下流に放流する水路式と呼ばれる発電ダムによってつくられる。
1990年、JR東日本の新発電所の稼働によって、信濃川中流域は慢性的な水枯れ状態に陥り、魚は死に絶え、大河の風景は一変してしまう。やがて同社が長年、許可水量以上の取水を続けていたことが発覚する。1984年、十日町市が国鉄に大量取水を許可した背景から取材を進める一方で、ふるさとの川を守ろうと立ち上がった人々の闘いを伝えながら、後の原発事故につながる地方を犠牲にするエネルギー事業の構造的問題を問う。
(集英社 680円+税)