「文豪たちの怪談ライブ」東雅夫編著
時代の変わり目には怪談が流行し、明治末から昭和初期にかけても、「百物語」などの催しが盛んに行われた。その中心にいたのが文化人で、中でも泉鏡花は無類の「おばけずき」で知られていた。本書は、鏡花と彼を取り巻く文人墨客たちの「おばけ」を通じた交流と、彼らが夢中になった怪談と怪談会の模様をつづる評論+アンソロジー。
鏡花の師・尾崎紅葉は、怪談には理解を示さなかったが、一度だけ自らが体験した不思議話を披露したことがあったという。それは13、14歳の頃、留守番中に台所のかまどの角の落書きのカニのような小さなかけめが、陽炎に乗るように動いたというものだった。
他にも鏡花を中心に、紅葉が主催した「硯友社」の面々が語る怪談など、文豪たちの怪談実話を多数収録。
(筑摩書房 900円+税)