「あやうく一生懸命生きるところだった」ハ・ワン著・画 岡崎暢子訳
ゲーテの「人生とは速度ではなく方向」という言葉を読んだある日、うっかり辞表を社長のデスクの上に落としてしまった。社長は僕の決断を尊重して、快く送り出してくれた。折り返し地点の40歳まできたが、僕は気力も体力も底を突いた。そこで、今日から必死に生きないようにしようと決心した。僕らの社会は競争社会なのに、僕は勝った記憶がない。死に物狂いでやってきたのに。
ところで、誰に負けているのだろう? これ以上負けたくないから会社を辞めた。会社がいやになったわけでも、イラストの仕事に集中したかったわけでもない。一度くらい、勝ち負けにこだわらない生き方をしてみたかったのだ。
日常を抜け出して立ち止まった著者のエッセー。
(ダイヤモンド社 1450円+税)