「『駅の子』の闘い」中村光博著
戦争で親を亡くし路上生活を余儀なくされた戦争孤児。夜露をしのぐため駅を拠点にしたことから「駅の子」や浮浪児などと呼ばれた。そんな「駅の子」たちを取材したルポルタージュ。
母子家庭で育った神戸在住の内藤さんは、12歳のときに空襲で焼けだされ、三宮の駅に流れ着く。心労と食料不足で衰弱した母は、疎開中の妹を息子に託し息を引き取る。 戦後、疎開先から戻ってきた妹と合流した内藤さんは、時に闇市で盗みやスリまでして生き延びてきた。その姿はまさに映画「火垂るの墓」そのもの。
他にも疎開先で両親を失い、上野の地下道をねぐらに妹弟を守りぬいたという金子さんなど。国や周囲の大人からも見捨てられ、差別に苦しみながらも生き抜いたその壮絶な体験が明かされる。
(幻冬舎 880円+税)