「ザ・クロニクル 戦後日本の70年(1)1945-49 廃墟からの出発」共同通信社「戦後70年写真事業実行委員会」編
明年に戦後70年を迎える日本の歩みを報道写真で振り返る年代記。共同通信社が保有する2000万枚以上のアーカイブと全国の新聞社の秘蔵写真を厳選し、昭和から平成への激動の70年をシリーズ全14巻でたどる。
第1巻の本書には、1945年3月10日の大空襲で焦土となった東京の惨状から、49年の湯川秀樹博士ノーベル物理学賞受賞まで、敗戦から復興へと歩み始めた5年間を300枚以上の写真で記録する。沖縄戦をはじめ、広島と長崎への原爆投下、降伏を告げる玉音放送、マッカーサー来日、そしてミズーリ号艦上での降伏文書調印式など、教科書でもおなじみの写真とともに、終戦の4カ月前に沖縄で撮影された一枚の写真に胸を突かれる。それは米軍偵察機を欺くためにわらで作られた偽装軍用機を写したものだ。多くの写真が多数の犠牲を出した戦争の酷さを伝えているのに、ここまで追い込まれながらも、なおかつ敵と戦おうとする当時の指導者の愚かさと滑稽さを、この一枚が象徴している。
駅にたむろする戦争孤児と対照的に、収容所で食事をする東京裁判中の東条英機など、一枚の写真が幾百の言葉を費やして語るよりも深く歴史の核心を伝える。