「貧困の戦後史」岩田正美著
貧困には「かたち」がある、というのが著者の考え方だ。時代によって、地域によって特色があるという。
たとえば敗戦直後は、食べるものすらないというかたち。戦争で生み出された浮浪者、浮浪児たちは「かりこみ」によって強制収容され、その一部は炭鉱労働者として送り出される。また旧満州の開拓者や軍人は帰国後、国内開拓民として僻地に追いやられ、酪農家として借金に苦しむ。それが後の海外移住を促進する政策につながる。
また、高度成長期の大衆消費社会の実現が、多重債務問題を引き起こし、バブル崩壊後、ホームレスを誕生させることにつながった。
貧困の問題を個人の自立に偏りさせ過ぎることを問題視し、住宅手当の支給、こどもの養育費用の支援、福祉貸し付けの充実などを提案する。(筑摩書房 1800円+税)