「バスへ誘(いざな)う男」西村健著
「私」は、バス乗り放題の東京都のシルバーパスを使って、路線バスの旅コーディネーターとしていろいろな路線を紹介している。
ある日、バスでときどき顔を合わせる男に、つい声をかけてしまった。同年配のその男、炭野は、退職した元刑事で、路線バスの旅を楽しんでいるという。その日、「私」は、小寺さんという女性から依頼を受けた。亡くなった夫がよく都庁や霞が関の官庁街を通るバスに乗って建物を見て楽しんでいたが、そのバス路線を知りたいと頼まれた。「都営バス」としか聞いていなかったというが、それは「東98」系統だった。2013年に都バスが撤退して、今はその路線は東急バスしか走っていないことを、炭野は指摘した。すると小寺さんは、炭野の洞察力を見込んで、バス旅に同乗してほしいと言う。
身近な路線バス旅に関わる小さな謎を解くトラベルミステリー。
(実業之日本社 1600円+税)