「降るがいい」佐々木譲著
携帯電話にショートメールで清水真知子の訃報が届いた。差出人の「中西浩也」という名には記憶があった。葬儀は既に終わっていて、「配偶者として」密葬にしたという。真知子はいつもダメな男に引かれがちで、以前の離婚の原因もDVだと言っていた。わたしはメールで連絡して中西に会った。中西は真知子をずっと介護していて、彼女が覚悟したとき、入籍したと言った。中西は別れ際に、わたしと真知子は本当に業界が一緒だと言うだけの仲だったのか確認して帰った。その点ではわたしは隠し事はしなかったが、真知子が中西について言ったことは、言わなかった。(「隠したこと」)
人の心に隠された小さな「真実」を描く13編の短編。
(河出書房新社 1700円+税)