「迷子のままで」天童荒太著
宅配のドライバーだった勇輔は、配達先のシングルマザー奈桜と結婚した。奈桜の息子、晴真が熱を出したとき、タクシーがつかまらなくて困っているのを見かねて、クリニックまで送ったことがきっかけだった。
ところが、それまではなついていた晴真が、一緒に暮らし始めるとよそよそしくなった。
デパートで晴真を見ていてと頼まれたのに目を離したのを奈桜になじられ、もう無理かもしれないと勇輔が思い始めた頃、高校時代の親友から電話があり、「おまえの子どもが殺された」と。最初の結婚でもうけた息子、達海が、母と再婚した男に殺されたのだ。(表題作)
「親」になれない男の揺れ動く心を描いた作品ほか1編の短編集。
(新潮社 1250円+税)