「そして、海の泡になる」葉真中顕著
大阪の高級料亭の女将、朝比奈ハルは株式投資で巨万の富を築き、「北浜の魔女」と呼ばれた。ところが、ハルにそそのかされて不正に手を染め、自殺した者や、「うみうし様のお告げ」でハルに殺された者が出た。ハル自身も4300億円の負債を抱えて破産し、刑務所で獄死する。
ハルが生まれたのは、和歌山県の海の近くの村だった。父は息子2人が戦死してからおかしくなり、「子をつくらなあかん」と、12歳のハルを犯した。戦争が終わった翌月、ハルは浜辺でびしょ濡れの僧に出会う。うみうしのように金色ののっぺりした顔をして、「私はおまえを助けるよ」と言った。ハルは自分を生んだこの世界に復讐することを誓う。
バブルの時代を描く社会派ミステリー。
(朝日新聞出版 1600円+税)