「愛の伊予灘ものがたり」西村京太郎著

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 取材で観光列車「伊予灘ものがたり」に乗車した雑誌記者の新見は、乗客の老婆が気になる。彼女は、行きも帰りも同じ場所で数珠を握り海に向かって瞑目していた。

 松山駅で下車した彼女を追うと、娘が営む飲食店にたどり着く。客を装い話しかけるが、ハルという名の老婆の口は重い。調べると93歳になるハルは終戦の日の翌日、松山海軍基地を飛び立った3機編成の紫電改が、伊予灘の上空を飛んで佐田岬の方へ消えたのを見たと言い続けているらしい。しかし、当時の記録にはそのような事実はなかった。

 やがて新見は、ハルの弟が終戦の翌日に特攻を命じられて戦死した事実を突き止める。数日後、新見の他殺体が東京の自宅で見つかる。

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