「駒音高く」佐川光晴著

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 67歳のチカは千駄ケ谷の将棋会館で清掃員として働いている。無口なチカは仕事中に誰かと言葉を交わすことはないが、4年前に1度だけ少年と話したことがある。ほとんど口をつけていない弁当をゴミ箱に捨てにきた少年は、泣き腫らした顔をしていた。奨励会入りを目指すその少年は、おそらく対局で負けたのだろう。チカは思わず励ましの言葉を送ったのだ。その後、一度も少年を見かけることはなかった。

 春、一人旅が趣味のチカは、大阪に向かう。思いついて大阪の将棋会館に足を踏みいれたチカは、あの時の少年・弓彦と再会する。(「大阪のわたし」)

 他に、初めて駒を手にしてから半年で頭角を現した小学6年の野崎など、将棋の世界に生きるさまざまな人々を描く連作集。

(実業之日本社 700円+税)

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