「庭」小山田浩子著

公開日: 更新日:

 久しぶりに帰省して、寝苦しい一夜を過ごして私は、祖父に起こされる。時刻は午前3時。夕飯に姿を見せなかった祖父は、最近は寝たきりでボケも始まったという母の話から信じられないほどしっかりしていた。促されるまま着替えて家の外に出ると、祖父は私を自転車の後ろに乗せて走り出した。「うらぎゅう」に行くという。前日、1日2便しかないバスで実家に向かう途中、乗客と運転手も「うらぎゅう」を話題にしていたが、私には何のことか分からなかった。

 両親に離婚の報告をして、届け書に署名をもらうための帰郷だった。夕食の席でふと思いついて尋ねると、両親はうらぎゅうのことを知っているようだった。

 平凡な日常にふと顔をのぞかせる不条理を描く不思議な読後感の短編集。

(新潮社 590円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動