「落暉(ゆうひ)に燃ゆる 大岡裁き再吟味」辻堂魁著
元文2年晩秋、大岡越前守忠相が江戸南町奉行から寺社奉行に転出して1年余が過ぎた。表向きは栄転だが、忠相が主導した貨幣吹き替えを巡り、両替商などの巨大商人との暗闘に敗れた結果だった。
ある日、気鬱で登城を控え日記に向き合っていた忠相の脳裏に、5年前に南町奉行所の大白洲に座っていた男の顔が蘇る。指物職人の与佐というその男は、米問屋高間の手代を殺した罪で打ち首の裁定が下り結審。あとは言い渡すばかりだった。事件は、飢饉で米価が高騰、群衆が米を求めて問屋に押し寄せた騒動の中で起きた。与佐の最後の言葉が耳に残る忠相は、鷹匠の息子・十一の助けを借り、もう一度、高間騒動について調べ直す。
還暦を過ぎた名奉行が過去の事件と向き合う時代小説新シリーズ。
(講談社 748円)