「桎梏の雪」仲村燈著
文化文政の頃、将棋の世界は大橋本家、大橋分家、伊藤家といった家元棋士がしのぎを削っていた。御城将棋の日、大橋分家の九世名人、大橋宗英は病のため大手門の前で意識朦朧となり、屋敷に引き返した。文化6(1809)年11月17日、宗英は鬼籍に入る。宗英には嫡子の七代宗与と養子の英俊がいるが、実力はもうひとつ。英俊の妹、お弦は英俊に劣らぬ棋才の持ち主だが、女ゆえ、表に出ることはなかった。
一方、伊藤家の鬼宗は名人にふさわしい実力を持ちながら、大橋本家の先代当主、十代宗桂が大橋家の家格を主張して横やりを入れたため、名人位は空位となっていた。
棋士たちの盤上の戦いを描く時代小説。
(講談社 1815円)