「結(ゆい)」大島真寿美著
京町堀の造り酒屋、松屋の倅(せがれ)、平三郎は、評判になっている操浄瑠璃(あやつりじょうるり)の「妹背山婦女庭訓」を見に、芝居小屋に足を踏み入れる。夢中になって、結局五遍も見た。――舞台の上でしか見ることのできないものがある。父親が死んで半年たった頃、老番頭に意見されて、「つぶれる前に、店、畳もか」と造り酒屋をやめ、店に父が集めた骨董を並べて寂物屋に衣替えする。嫁をもらった後も芝居道楽を続けていたが、嫁に、趣味で描いている絵を扇絵にしてはどうかと勧められる。店先に並べてみたら、売れた。ある日、遊び仲間の狂歌作者、銅脈が、役者絵の本を出すという話を持ち込む。
人形浄瑠璃に狂った人びとを描く時代小説。
(文藝春秋 1870円)