「ファーブルの言葉」ジャン・アンリ・ファーブル著 平野威馬雄訳
ウグイスは猛烈に嫉妬深く、偏狭なので、自分の狩猟区をしっかり守り、他の鳥や同じウグイス同士でも隣り合ってすんだりしない。近づく者があれば追っ払う。ところが春になると、ファーブルの家の近くのちっぽけな緑樫の林で騒々しいウグイスの鳴き声が聞こえる。林の所有者に尋ねると、蜜蜂がたくさんいるからだという。蜜蜂は死んだ幼虫を巣の外に出すが、それがウグイスの好物なので、巣に持って帰る。好物がたっぷりあるので、ウグイスは自分たちの習性に反して隣り合ってすんでいるのだ。
「昆虫記」で知られるファーブルが、昆虫だけでなく小さな生き物を観察して、その背後に広がる思いがけない精妙な世界を伝える言葉を紹介。
(興陽館 1650円)