「最後の読書」津野海太郎著
「読む人間、書く人間、つくる(編集する)人間」として、本とともに生きてきた著者が、読書をテーマにつづるエッセー集。
ある出版社が鶴見俊輔氏が晩年につけていたノート「もうろく帖」を活字化。その後編には脳梗塞で倒れる6日前までのメモが記されている。病に倒れた鶴見氏は、言語の機能を失うものの受信は可能、発信は不可能な状態になったという。
驚くことに、長期の入院の末に帰宅し、亡くなるまでの3年半もの間、本を読み続けることをやめなかったと知り、老いの底は、いま自分が想像しているよりもはるかに深いようだと思いを新たにする。(「読みながら消えていく」)
目は弱り、記憶力は衰える一方だが、それでも新しい出合いを求め手にした読書の記録。読売文学賞受賞作。
(新潮社 693円)