「読書のちから」若松英輔著
ある日、父が、この人の本を読んでみるとよいと言って、著者に井上洋治の「余白の旅 思索のあと」を手渡した。それは著者にとって人生を変える一冊だった。この本と出合ったことで、著者は「わたし」になるための道を歩き始めたと述懐する。
井上はカトリックの司祭で、井上のいう「余白」は「神のはたらきの場」である。白い紙に墨で円を描くと、そこには「円」の図とともに「余白」も生まれる。私たちの深層意識は「余白」にも意味を感じている。本を読むときも、「行間を読む」というように、字義通りに理解する以上の意味を読み取る。(「余白の言葉」)
他に、著者の「危機」を救った遠藤周作、須賀敦子らの言葉を紹介する。
(亜紀書房 1430円)