石原壮一郎(コラムニスト)
11月×日 長年、大人の人間関係やマナーをテーマに、駄文を書き続けています。このところ力を込めて考察しているのが「失礼」について。どんな言動が失礼に当たるのか、失礼という感情はどこから生まれてくるのか。「失礼」に惹かれると話していたら、年末から某週刊誌で、「令和の失礼研究所」という連載を始めることになりました。編集者に「石原さんと失礼とは相性がよさそうですね」と言われましたが、微妙に失礼に聞こえるのは気のせいでしょうか。
失礼研究を深めるべく、あらためて買い集めた本の中で、タイトルを見た瞬間に「これはタメになるに違いない」と確信したのが、「その気遣い、むしろ無礼になってます!」(すばる舎 1540円)です。
予想は的中しました。失礼(この本で言う「無礼」)は、失礼を避けようとしたせいで生まれることが多々あります。積極的に「すみません」と謝ることは、礼儀正しい行為です。しかし、謝りすぎは相手をむしろ不愉快にさせてしまうことも。必要以上に体調を気遣ったり、お土産などをもらってすぐにお返しをしたりすることも、意図とは裏腹に失礼になりがちです。
著者の三上ナナエさんは、元CAで現在はコミュニケーションなどの研修講師として活躍している方。気遣いやマナーの専門家だからこそ、その危険性を熟知しているのでしょう。どうやら、その気遣いが「自分のため」に行なわれると、失礼が生まれてしまうようです。
11月×日 お互いに気を付けていても、世に失礼の種は尽きません。他人の失礼や間違いに、いちいち腹を立てるのも、かなり厄介な失礼です。
福井県立図書館編著「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」(講談社 1320円)は、福井県立図書館のカウンターに寄せられた利用者の相談を集めたもの。「人生がときめく片づけの魔法」が「人生が片付くときめきの魔法」、「火宅の人」が「ひやけの人」になるなど、人知を超えた絶妙の覚え違いに大笑いさせられます。
他人の失敗も、そして自分の失敗も、明るく楽しく笑い飛ばせる人になりたいものですね。