「うかれ女島(めじま)」花房観音著
32歳の大和は、母親の死を伝える手紙を4人の女性に送る。大和の母・幸子は真理亜という源氏名の娼婦だった。父の死後、飛田遊郭で働き始めた母は、その後、大和を父方の実家に預けて「島」に渡り、晩年は女衒(ぜげん)として生きていたらしい。本土から船で5分ほどのその島は、売春島と呼ばれていた。
3カ月前、海に落ち溺死した母の死は事故死として処理された。母を憎み、長く音信不通だった大和だが、供養のために母が残したメモに従って手紙を書いたのだ。メモには「会わなければならない。もしも、会えないまま私が死んだら、この女たちに私が死んだことを伝えて欲しい」と4人の名前と住所が書かれていたのだ。
大和と幸子、手紙を受け取った女たちの人生が交錯する長編ミステリー。
(新潮社 670円+税)