「きりきり舞いのさようなら」諸田玲子著

公開日: 更新日:

 人気戯作者十返舎一九の娘・舞はある朝、普段と違う雰囲気を感じた。普段なら二日酔いで寝過ごしている継母・えつが早朝から朝餉(あさげ)の支度をし、筆が乗らずに怒鳴り散らすのが常の一九が朝から仕事をしていたからだ。

 舞は、めったにない状況に不吉な予感がしたのだが、程なくして予感が的中。近場から火が出て、一九、えつ、舞の亭主の尚武、養子の丈吉、葛飾北斎の娘で居候のお栄ともども焼け出されてしまったのだ。逃げる途中で捨てられた老婆まで拾う羽目になり、増上寺境内のお救い小屋に身を寄せたものの、長居をするわけにもいかず、とりあえず北斎先生の借家に転がり込んだ。勝手気ままに振る舞う家族に翻弄されながら、なんとか生活を立て直そうと舞は奮闘するのだが……。

 一九の気丈な娘・舞が、一九の周囲に集まる人々に頼られながらなんとか切り盛りする人気の「きりきり舞い」シリーズ最新刊。今回も幽霊騒ぎや盗難騒ぎが起こったり、香典目当てに十返舎一九の野辺送りをすることになったりと一筋縄でいかない事件がてんこ盛り。個性的な登場人物の軽妙なやりとりも楽しい。

(光文社 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…