「ミカエルの鼓動」柚月裕子著
北海道中央大学病院に籍を置く心臓外科医・西條は、医療用ロボット「ミカエル」を使ったロボット支援下手術の第一人者。導入された15年前から海外でこつこつと腕を磨き、ミカエルによる心臓手術に成功してからは北中大病院も世間の注目を集め、西條は病院長の信用も厚い。
そんなある日、ドイツ帰りの天才医師・真木が病院長の招へいで循環器第一外科の科長に就任した。3年の任期という条件に、西條は副院長の椅子争いにはならないと胸をなで下ろす。ところが、12歳の少年の難病手術方法を巡って2人は対立。ミカエルによる手術を主張する西條に真木は弁形成術を譲らず、病院長までもが「患者の気持ちを優先」と暗に真木の方を持つ。
同じ頃、ミカエル手術の技術を持っていた知人の医師が自殺。西條はジャーナリストの黒沢から「ミカエル」に欠陥があると耳打ちされる。
「孤狼の血」「盤上の向日葵」など、数々のベストセラーを世に送り出してきた著者による初の医療小説。
最新医療「ミカエル」をめぐる病院、メーカー、医師らのさまざまな利権と思惑が蠢く中、西條はミカエルによる手術を決意。果たして少年は助かったのか。目の前の命か未来の大多数を救うのか、医者の決意を問う感動巨作。
(文藝春秋 1870円)