「最終列車」原武史著
柳田國男が活躍した時代は、日本全国で鉄道網が確立される時期だった。車内から窓の外を眺めると、それぞれの地域の違いを自分の目で確かめることができた。これは観光地という「点」を訪れるのが目的の旅ではなく、汽車に乗ることが目的で、景色を「線」として見ていたのだ。そのためには汽車の走る速度があまり速くてはだめだが、昭和になると特急「燕」が登場し、鉄道の価値がスピードという数値に一元化されるようになった。
だが、コロナ禍でオンラインが普及すると、スピードは無意味になった。今、振り返るべきなのは柳田國男が見いだした鉄道固有の価値である。(「柳田、谷崎、三島の鉄道観」)
「鉄学者」がコロナ禍の鉄道を考察するエッセー。
(講談社 1980円)